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あれこれ・あるがままに(第69回)    平成26年1月19日

  
東京都知事選の興味
 

 猪瀬知事辞職に伴う注目の東京都知事選が来る1月23日(仏滅)告示の2月9日(仏滅)投開票と確定した。知事辞職後、桝添要一元厚生労働相他数名の出馬意向が報道されていたが、1月14日になって細川護煕元首相の出馬表明があり前哨戦は一気にヒートアップした。ジジの今回の興味は脱原発を前面に出した細川元首相の出馬表明と小泉元首相の応援発言、その数日前に森元首相がこの出馬を牽制したテレビ発言の内容である。それに、何れの方も70歳代の老元首相ということで話題にしたい。

 まず年齢の話題
 細川氏76歳、小泉氏72歳、森氏76歳ということであるが、3氏とも年齢なりの貫禄と風貌でたいへんお元気そうである。ジジも今年の4月で71歳と70歳代の仲間入りをしているが、ジジが思うに、70歳代に入っても元気な活動はなによりで、その活動が趣味やボランティア等自身で完結できる分野であれば世の役にも立つというもの、しかし、他人との間の新たな仕事の引受や約束という分野では残された時間の関係から不履行の可能性も見通し抑制的な見極めが大事であるということ。そのような意味で、1300万都民との新たな約束を履行しなければならない都知事の立場を考えると、76歳というのは高齢非難を受けてもやむを得ないところである。
 しかし、ジジはこれまで高齢者の活動についてはこのような考えであったが、自身が現実に70歳代に入った今、70歳代半ばの人の現役活動に何か希望というかエールを送りたい気持も沸いてくるのである。もっとも、自身は「衰え」も自覚するのでそのエールは声も小さく「遠慮がち」ではあるが。

 元首相3人の発言要旨
 細川元首相:「今の日本が抱えている原発問題などについて、私なりに国の存亡に関わる危機感を持っている」「原発(問題)は知事として非常にやりがいのある仕事。全力でやりたい」

 小泉元首相:「この国の形、特に原発問題をどうするか、共感できるところがたくさんあった。都知事選への立候補には心から敬意を表明したい」「この 戦いは、原発ゼロでも日本が発展できるというグループと、原発なくしては発展できないというグループとの争いだ」「原発がなくても日本は発展できる。東京が原発なしでやっていける姿を見せれば必ず国を変えられる。細川さんが当選すればエネルギー問題、原発問題で国政に影響を与えることになる」

 森元首相:「小泉氏の原発反対論で知事選を勝とうしている。卑怯(ひきょう)だ。フェアではない。 原発を絡めて通ろうとする人は心がやましい」「オリンピックを人質に原発の是非を問うのは卑怯(ひきょう)だ」「安倍総理を育てたのは小泉元総理」「その安倍政権へ大きなダメージを与えかねない原発を争点とした選挙を行うことが政治家として良いのか。賢明な小泉さんだから判断を逡巡(しゅんじゅん)していると思う」
 
 コメント
 ジジは、「脱原発絶対論者」である。東日本大震災以後このサイトで度々意見を表明してきた。
 第34回(H23、4) 想定外の想定
 第48回(H24、5) 世相雑感
 第52回(H24、9) ひいきはうつりにけりな
 第62回(H25、7) 緊急意見表明(参議院選挙に向けて)

 よって、ジジは細川・小泉両氏の脱原発言に全面的に賛成の立場である。
 この都知事選に立候補している舛添要一候補は、原発問題について、細川・小泉両氏の意見に対し「圧倒的多数の国民は原発依存をやめようと思っているが、即時ゼロは無理という方が多い。みな同じ方向を向いており、二つの陣営の戦いというのは理解ができない」と批判している。
 ジジの意見は、桝添氏の発言は一見常識的な考え方のようであるが、同氏が使う「原発依存」という表現はそもそも原発の存続を前提にした言葉であり、この表現からでは「過度の依存はやめよう」という議論にはなるが、「脱原発」にはつながらず、この表現を使う感性を持つ人のもとでは100年経っても原発ゼロは実現できないと考える。原発問題は、小泉氏の立論と同じように「原発ゼロか」「原発肯定か」に突き詰めて議論すべき問題である。

 森氏の発言にはコメントしない。同氏の発言は原発是非の問題ではない。同氏はその時期、年齢的批判がある中でオリンピックの大会組織委員会会長への就任が決まったことから、氏の情勢分析からすれば小泉氏支援による細川立候補は都合がよくないと見えたのであろう。そのような意味で見やすい発言動機であり、老元首相の発言に賛否を明らかにするまでもない。 
 今日は1月18日であるが、ここへ来て細川氏出馬への逆風報道も多い。果たして1月23日の結果や如何。

 閑話休題
 上記のとおりコラムをまとめておいて、1月19日の朝公開する前にネットニュースを見ていたところ、次の記事に目が止まった。
 『森喜朗元首相は18日のテレビ東京番組で、小泉純一郎元首相が主張する「原発即時ゼロ」について「五輪のためにはもっと電気が必要だ。今から(原発)ゼロなら五輪を返上するしかなくなる。世界に迷惑をかける」と批判した。森氏は東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会会長への就任が決まっている。』
 この発言に対し、ネット上の反応は主として次のようなもの。
 『五輪を人質にしてるとか意味不明な批判してた森が五輪を人質にしたで ござる。・・じゃあ最初からオリンピックなんか呼ばずに復興に金をかける べきだ!原発ゼロでも五輪はやれよ・・アホだろ。』

 森氏はオリンピック大会組織委員会長の就任については当初固持されていたとのことであり、氏の見識であるが、それでも就任した以上は批判に晒されるのはやむを得ないことである。ジジも自戒を込めて『失言、権謀術数、老獪、老害』という言葉を頭に浮かべながら本稿を閉じることとする。