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あれこれ・あるがままに(第143回)    令和2年3月25日
                          

永  き  日



永き日や 御簾に射し込む 朝日影

 3月に入ると、ジジは毎年日が永くなったのを実感するシーンがある。その場面背景は自宅居間である。自宅建物東側に坪庭程度の庭があり、和室の居間はこの庭に面しているので、居間から庭がよく見えるように、東側を引き違い透明ガラス戸4枚の掃き出し窓にしている。建てた当初は日射しを考えガラス戸の内側に障子4枚を入れていたが、引き違いの障子では全部開けても2枚分の障子が邪魔をしガラス戸が全面オープンにならない。そこで障子をやめ、代わりに和風巻き上げすだれを吊り下げたが、こうしたことですだれを巻き上げるとガラス戸越しに庭全体を見通すことができ、グッド。

 さて、「日が永くなった」話しに戻るが、この3月の時期は居間に庭越しの明るい陽光が射し込むため、しばらくの間すだれを全部下ろすのであるが、すだれに庭木のシルエットが影絵のように浮かぶのである(写真)。ようやくという感じの暖かさが感じられ、ジジはその光景を見て、たら婦人に「日、永くなってきたなー」と話しかけるのが毎年のパターン。日が永くなったのを実感するシーンである。

  ところで、俳句では「永き日」を春の季語としているそうである。年間でいちばん日照時間が長いのは夏至だが、早春こそ日が永くなったことが意識されるので、ゆったりとした春の日の実感から春の季語とされたものだろう。
 ちなみに、上五に「永き日」を置いた有名俳句を拾ってみた。

  永き日も 囀り足らぬ ひばり哉 (松尾芭蕉)        ※囀り→さえずり
   
  永き日や 菜種つたひの 七曲り (正岡子規)        ※菜種つたひ→菜の花の咲く道沿い
   
  永き日の にはとり柵を 越えにけり (芝不器男)


 そこで、ジジも俳句とまでは言えないとも、上五に「永き日」を置いた五七五の言葉遊びをしてみた。言葉遊びイベントは独りよがりの一人句会、お題はなし、ところは自宅居間、ときは3月6日たら夫人の誕生日、よく晴れた午前のこと。

  永き日や 御簾に射し込む 朝日影          ※御簾→和室用すだれ
   
  永き日の 朝日を受けて ほとけのざ

  永き日や 実桜ここに 四五輪と

  永き日の 命溢れて 桜草

  永き日や めだかメジロも 心地よし

  永き日が 来たりてうれし 水温む

  永き日や 菜花漬けと 新子食う          ※菜種菜→菜の花 新子→出始めのイカナゴ
    
  永き日や  コロナ蔓延 永すぎぞ

 
永き日の 朝日を受けて ほとけのざ
 
永き日や 実桜ここに 四五輪と
 
永き日の 命溢れて 桜草

         永き日や めだか
     メジロも 心地よし 
 追伸 たら婦人がこの原稿をちら見した翌日頃、「私も俳句のまねをしてみたわー」と言ってメモを見せてくれた。メモには次の句が書いてあった。
      庭の花 趣味がこうじて 自費出版  

 句の上五は「庭に春の花が咲き始めたこと」、中七・下五は「そんな庭を見ていたらジジが花の写真集を自費出版までした」ことをさらっと。句意は「趣味にご熱心だこと」であると思うが、「趣味に余計なお金をかけてまで」と感じるのはジジのうがち過ぎか。