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あれこれ・あるがままに(第136回)    令和元年8月25日
                          
  
“韓日関係”と恨(ハン)
 問題の所在
 韓国との関係では、最近、韓国大統領の文在寅(ムン・ジェイン)政権がいわゆる慰安婦問題に関する日韓合意を破棄し、続いて韓国最高裁がいわゆる徴用工問題について日本の企業に損害賠償を命じた判決を出し、この判決は韓国国内法により確定した。
 これらの問題については、前者に関し、2015年12月28日、日韓両政府が慰安婦問題について「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」とした合意があり、また、後者に関し、1965年に両政府間で「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(日韓請求権協定)」が結ばれている。

 これらの問題がこじれたのは、いわゆる徴用工判決確定後に日本政府が韓国との貿易に関し、8月2日、韓国をそれまでの「ホワイト国(優遇対象国)」から除外するという措置をとったことからであり、日本政府の否定にかかわらず、韓国政府及び韓国人の多数は、この措置を徴用工問題に対する経済的報復と受け止めている。
 この措置を受けて韓国政府は2日午後、緊急の閣議を開いたということで、ニュース報道では文在寅大統領の次のような発言が伝えられ、国民の結束を呼びかけた。
 『加害者の日本がぬすっとたけだけしく大声をあげている状況を決して座視することはできない』
 『われわれは再び日本に負けることはない』
 その後、韓国の国内世論はネット等の報道によると、反日一色というような状況を呈し、日本製品の不買運動にも発展している。

 他方、日本人の多数は、「またか」というウンザリ感に加え、「韓国は国家間の約束を守らないのはケシカラン」として嫌韓意識が高まり、官民ともに当面は静観無視をするのが良策であるという態度である。

 このように両者は問題の捉え方に大きな温度差があり、加えて8月22日、韓国政府が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めたことにより、両国関係は悪化の一途を辿っている。韓国の対応が過熱化するのは日本側の無視政策が韓国人の「自尊心」に大きく影響を与えたが、的確な打つ手がないまま、まさに八つ当たりの様相を呈している。
 ネット上では両国の温度差の違いから、日本発の“日韓問題”より、韓国発の“韓日問題”が氾濫する状況である。よって、本コラムの表題を思わず「最近の“韓日関係”」と題した次第!!
 
  両国の主張
 あ)韓国最高裁判決は、「日本の不法な植民地支配および侵略戦争の遂行に直結した日本企業の反人道的不法行為に起因する慰謝料が、請求権協定の適用対象に含まれていないと判断」し、日本企業に元徴用工らへの賠償を命じた。
 韓国政府は問題の本質が日本の韓国併合の加害行為にあるという立場で、判決の処理に関しては三権分立を盾に取り、日本政府の呼びかけに応じず無視している。

 い)日本の外務省は1965年の日韓請求権協定締結に至る当時の議事録を7月29日に公表し、徴用工訴訟で韓国最高裁判決は個人請求権が消滅していないと結論付けたが、議事録は当時、日韓双方が問題は決着したと認識していたことを示す資料であり、従って、韓国最高裁判決は国際法に違反するという主張。

 ジジの考え
 政府間協定の効力が、私人間の関係を自動的に無効化するわけではないことは、一般論としては妥当であり、しかも三権分立の原則にのっとって行政府が司法府に命令を下せないことも当然である。そして、司法府が行政府とは異なる法理論にしたがって判断を下すことも、誤った理論ではない。
 よって、ジジは韓国最高裁判決が直ちに国際法に違反するとまで断ずることはできないように考える。
 しかし、日韓請求権協定は国家間の条約であり、その協定締結に至る当時の議事録からすれば、今回の判決の実現については、国際法違反はともかくとしても韓国の責任において解決すべきであると考える。よって、韓国は国内法を整備し、賠償金は韓国政府が払うべきだというのがジジの考え方である。

 今後の両国関係
 あ)両国関係がここまでコジレてくると“国交断絶”という選択も見えてくるほどであるが、ジジはいずれ解決のための交渉が開始されると期待と予想をする。しかし、両国ともこの交渉により国民の多数の理解を獲得するのは並大抵のことではない。
 それは、韓国側においては国民気質の深層に「恨(ハン)の概念」が支配しているので、政府が安易な妥協に動けば政権の崩壊に繋がりかねず、他方、煽りすぎるとクーデターもある国であるから、対応は慎重にならざるを得ないこと。
 そして、日本側においては、嫌韓意識から政府の静観無視の政策を多数の国民が支持している。なお、国内観光産業の一部から「観光地に悲鳴」という報道もあるが、それはその報道記者の主観が入った記事であり、国民の多数という意味では“政府の無視政策”に支持が集まっていると考えられる。そのような事情から日本政府も安易な妥協に踏み出せない状況である。
 また、現在でも韓国人に向けたヘイトスピーチ騒動が問題になるように、かつての日本人の深層にあった「朝鮮人差別」の意識が一部抜け切れていないところもあるので、安易なアメ政策は国民の理解を得られないと考えるのである。

 い)ところで、韓国内の中央日報やハンギョレ新聞のネット記事によると(これらの新聞は文在寅大統領支持の立場のようであるが)、今回の問題に関する文在寅大統領の前記過激な発言に多くの国民が喝采している状況が報道されている。
 いったい、戦争状態でもないのに、敵国を非難するかのような文在寅大統領の情緒的かつ過激な言葉がどうして出てくるのであろうか?

 う)韓国人の、そして朝鮮人に共通するのは「恨(ハン)の概念」の支配であり、国民気質を形成している。ジジは文在寅大統領の過激な発言はこの国民性に由来すると考える。
 ここで「恨(ハン)」「恨(ハン)五百年」という精神構造を取り上げてみたい。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
 「恨(ハン)」は、朝鮮文化においての思考様式の一つで、感情的なしこりや、痛恨、悲哀、無常観をさす朝鮮語の概念。朝鮮における、文化、思想において全ての根幹となっている。歴史学者古田博司は朝鮮文化における恨を「伝統規範からみて責任を他者に押し付けられない状況のもとで、階層型秩序で下位に置かれた不満の累積とその解消願望」と説明している。
 そして、この「恨(ハン)」は、仏教が教える煩悩の一つである「恨 (こん)」とは意味が違い、「恨み辛みや不満を生きるエネルギーに転換した状態」のことで、朝鮮民族特有の精神構造である。

 今後の日韓関係
 日本国憲法下では、両国間の交渉以外に紛争解決の手段はない。ジジは、長い間、弁護士として困難で乗り越えられないような紛争を扱う仕事に携わってきたので、交渉術のポイントを一つ。
 ジジはこの交渉の成否のポイントは、一も二もなく交渉担当者の「信頼関係」が全てであると考える。そして、その信頼関係構築のポイントは、一も二もなく「共通言語で話しをする」「相手の目線に合わせて話しをする」ということに尽きると考える。「共通言語」という意味は、同じランゲージという意味の言葉ではなく、お互いが発する言葉の背景事情を前提とした言葉での会話という意味である。
 例えば、「歴史問題」という言葉を発するとしても、「恨(ハン)」「差別」という背景事情を頭に置いた上で、“歴史問題”と肯定的なニュアンスの声で言葉を発するのである。相手はその言葉を肯定的に受け止められるので、交渉の席が「共通言語」での会話になっていく、そうすると相手の立場の理解が共有できていく。これがジジの交渉術。

 ひとたび信頼関係が構築できたときは、当方側も相手側もお互いに不利益の底が見え、相手がそれ以上につけ込んでくることはないと信頼できるから、底に至るまでの不利益を容認する判断ができるのであり、そこから解決に向かう交渉が成り立つものである。

 なお、信頼関係のもう一つの側面は、交渉当事者の人物・器量にも大きく影響されるところがある。ここは田中角栄氏に出番をお願いしてみようか!!冗談!!

 終わりに
 今回のコラムは「ジャガー14回目の車検」の話題を予定していたが、5月25日の入庫以来まだ出庫してこない。よって、時事ネタにしたが、深みにはまってしまった。ああしんどー!!!!