時事折々トップへ

        
あれこれ・あるがままに(第130回)    平成31年2月24日
                          
  
明けの明星 

 ジジの日常は、二階の寝間に上がるのが午後10時過ぎ、起床は毎朝5時半前後である。この日常パターンは、5年ほど前から、すなわち夜のネオン川の見回りに出なくなってからのことで、70歳頃から1年を通じほぼワンパターン。(なお、昼も昼食休憩で家に帰るので、三食、ほとんど家めし・家飲みパターン、まかない方のたら夫人から「亭主元気で留守が良い」というつぶやきが聞こえてくるほどのワンパターン。)
 2月の朝5時過ぎは一番寒い時間帯、居間へ降りていくと先ずガスストーブに点火し、新聞を取りに庭に出るのが日課になっている。外に出ると朝の冷気が凜として厳しく、空はまだ濃い群青の夜色。晴れた日は、新聞を取り入れたあと庭越しに東の空を見るのが習慣になっているが、2月初旬の東の空は東南の方角下方に下弦の月が見え、その向こうにひときわ明るくゴールドに輝く星が見える。金星である。

 ジジは、時にしばらく佇み、そのような月星の情景を眺めることがあるが、ジジの心に浮かぶのは、あるときは「いとあはれなり!の詩的心情」、またあるときは「悠久ともいうべき時間空間のこと」、そして「生きるとは?命とは?」の命題が去来することもある。“ぶるっ!寒い”早く中に入らないと体が冷えてしまう。

 朝方に見える星のことで思い出したのは、むかし、柳亭痴楽の落語に「痴楽綴方狂室」という枕があり、その一つに『あさは朝星、よは夜星、ひるは梅干し、いただいて、ああ酸っぱいは、成功の基』という噺。この「あさは朝星、よは夜星」のくだりは、朝は夜明け前から、夜は日暮れまで精を出してみっちり働くという意味であり、百姓の働きぶりの言習わしであるが、ジジは子供の頃の、田植え時期の光景を思い出す。

 ジジは、この噺の“朝星・夜星”は、「金星」のことではないかと思うのである。金星は、夜明け前の東の空から太陽が上がってくる前に見え、日暮れに太陽が沈んだ後の間もなくの間だけ見える星であって、故に、別名を「明けの明星」「宵の明星」と呼ばれる所以である。

 ところで、金星は、“星”であるから日が暮れて暗くなった夜に見えるものと思うが、それは素人!!明け方と夕暮れに見えるだけで日中も夜中にも見えない。
 何故だろうか?。金星は地球と同じく太陽系の惑星であり、太陽に近い方から水・金・地・火・木・土・天・海・冥(現在は凖惑星)と位置し、ともに太陽を中心に回っている。そして、金星は地球より太陽に近い方の円、すなわち内回りであるから、地球から金星を見ると常に太陽の方向に見えることになり、それで昼間金星を見ても太陽の光が強いので見えない。また、夜は太陽と同じように自分の位置からは地球の裏側に回っているので見えないのである。中学理科知識の復習!!。

 今回は、天空の悠久の営みの話しから書き起こしたが、この先のジジの営み、有限の諸行無常、できるだけ変わらない日常パターンの続くを念(おも)う。お粗末ながら、「ジジ綴り方教室」の雑文!!。