時事折々トップへ

        
あれこれ・あるがままに(第105回)    平成29年1月17日
                          
  
トランプという嵐

 昨年11月のアメリカ大統領選挙中間予備選挙(国民の直接選挙)の結果、大方の予想(ジジも含めて)に反し、ドナルド・トランプ氏が当選し、この1月20日に大統領就任の予定となった。
 この結果に関し、毎日新聞2016/12/13(火)特集ワイド版において、同紙小国綾子記者が国際政治学者西崎文子教授(東京アメリカ太平洋地域研究センター長)にインタビューした結果をまとめ、「トランプという嵐」という表題で記事にしている。(掲載写真)
 その記事の表題がジジの受け止め方に繋がるような気がし、目を引いた。同記事では、西崎教授が述べたという次の発言を引用している。
 まず、冒頭の問題意識について
 「オバマ大統領のchangにはhope(希望)がありました。『一つの合衆国』」を掲げ、社会の分断に橋をかけようとしました。トランプ氏の主張はまるで逆。『米国を再び偉大に』という言葉に熱狂した支持者もいたでしょうが、多くの人にとってトランプ氏への投票は『絶望の中での選択肢』だったと思います」
 次に、述懐的部分言葉
 「本来、政治にも外交にも『自分はこう思うが、あなたの立場も分かる』というスタンスが必要です。英語でいうならempathy(共感)。それがトランプ氏には感じられない。」
 それから「私も同じだったのかも。『トランプ大統領はあり得ない』と思い込んでいた。彼の勝利で人々の不満の根深さに気付かされた。そんな人々の立場に思いをはせていなかったのかもしれません」

 トランプ氏の当選後はメディア上で各種意見・見方が百家争鳴の観を呈し、テレビでは「トランプ、トランプ」という言葉が盛んに流れている。
 (閑話休題)昔、1976年に起こったロッキード事件当時、テレビからは盛んに「コーチャン、コーチャン」という言葉が流れた。当時、保育園生であった娘が「コーチャン、コーチャンてうーさいなー(ウルサイ)」と言ったことがある。懐かしく思い出した。
 ところで、ジジは西崎さんの上記発言は卓見であると思う。その上で、ジジなりに、飲酒しながらテレビを見ながらの夕食談義の次元であるが、「トランプという嵐」の話題を数題。

 先ず、よろず批評家たら婦人の一言を紹介。
 「むちゃくちゃ言う人やねー!こんな人が大統領になったら心配やわー!怖いわー!」。
 (トランプ氏は選挙期間中時に強く下品で荒々しい言動を発していた。)

 次に、ジジは、トランプ発等の言葉尻を捉えてゴタク(御託)を並べる。
 その1:「アメリカ・ファースト」という言葉
 トランプ氏の第一のスローガンでありたびたび発言している。これは素直な意味では「大統領としてアメリカ人を第一に考える」という意味であるが、とても素直には受け止められない。素直な意味にとどまらず「アメリカ以外はどうなっても構わない」という意味合いがぷんぷんする。
 すなわち、「アメリカ・ファースト」に続いて、「メキシコとの国境にメキシコの費用で壁を作らせる」や、トヨタのメキシコ工場進出計画に対しては「とんでもない。アメリカで工場を作れ。さもなくばアメリカに持ち込むのに巨額の国境税をかけてやる」等々の言動を推しはかると、トランプ氏の利己主義的・優越主義的・排外主義的価値観は染みついた体質であり、同氏のア「メリカ・ファースト」はとても素直な意味とは受け止められない。

 その2:「なんて嫌な女だ」との不規則発言
 大統領選の候補者による第3回テレビ討論会で、クリント氏は富裕層に増税する計画について説明し、次のような発言を展開していた。すなわち、「社会保障への私の負担は増えます。ドナルドも同様です。もっとも、支払いを逃れる方法を見つけるかも知れませんけど」と。
 そのとき、途端にトランプ氏が反応してクリントン氏を遮るように、「なんて嫌な女だ(nasty woman)」とヤジった。この発言はたちまちソーシャルメディアで広まり、性的差別発言と非難するツィートで炎上したという。当然である。
 ジジが考えるに、トランプ氏に自制の堰を超えさせたのは自身の税金逃れに言及された故ではない。おそらく男性候補が同じように発言したとしても「嫌なやつ」くらいで受け流せたのではないか。発言が「女性」であったが故に、彼の深層心理に性的差別(女性差別)の価値観があるから増幅して聞こえ、我慢できず思わず本音の言葉が出てしまった、これがジジの見方である。
 トランプ氏の「いわゆる女好き」体質は選挙中のメディアの報道から大方が認めるところであろう。過去に「女はスターにならやらせる」といった下品な言葉を放ったこともあったという。思うに、トランプ氏は、女性に対しては、身内の女性は別であろうが、潜在している深層心理に男性を見るときの意識と違い、「女性は愛玩対象」であり「好みのタイプか」という意識が優先し、その潜在意識が女性を下に見る見方(女性蔑視)に繋がっているのではないか。「嫌なやつ」の表現ではなく、「嫌な“女”」という表現はその見方を裏付けていると思うのである。

 その3:トランプ氏勝利後の取り巻きによる人種差別発言
 WEB上で次のような怪しからん人種差別記事が目についた。
 『【12月26日 AFP】米大統領選でトランプ氏のニューヨーク州選対本部の共同本部長も務めた実業家のカール・パラディーノ氏は23日、現地週刊誌「アートボイス」の年末特集で次のように問題発言を繰り広げた。
 2017年に最も起きてほしいことを問われたパラディーノ氏は、オバマ氏が牛と肉体関係を持ったことが判明し「狂牛病にかかって」「死んでほしい」と回答。
 また最も消えてなくなってほしいものを問われると「ミシェル・オバマだ」と回答し、ミシェル夫人について「男性の姿に戻ってゴリラと一緒にジンバブエの奥地でのんびり暮らし、気楽にやってもらいたいものだ」と述べた。』
 なんたる人種偏見!!これはトランプ氏の発言ではないが、その発言者を盟友として重用していることからすれば人種差別的価値観を共有しているのであろう。

 (おわりに)
 毎日新聞2017/1/13(金)特集の橋本徹さんに聞く「トランプ現象」という記事で、橋本氏は『トランプ氏には問題発言は確かにあり、僕も全部賛同とは言いません。ただ、言葉尻だけを捉えて「差別主義者」「排斥主義者」とレッテルを貼り批判することは、アメリカ社会の課題とその対応策を見逃してしまう。』とまとめている。
 それはそうであると思うが、ジジはそのような言葉尻から窺えるトランプ氏の価値観と性行を認識した上での対応が重要であると思うのである。
 それでは、このコラムは「心配やねー、怖いね-」ということで締めにしたい。はてさて、トランプ大統領時代のアメリカはどうなることやら・・・。

 追記 
 1月20日正午(日本時間1月21日午前2時)にトランプ大統領就任の宣誓
 その後、新大統領の就任演説は時間16分、この間「アメリカ」という言葉を34回使ったが、human(人間的)の言葉は一回もなし。