和歌山弁護士会々報(第52号)   

        平成10年5月発行
 

      ご あ い さ つ (会長就任) 

 平成10年度(1998年度)和歌山弁護士会長として、この1年、小野原聡史・田中祥博両副会長とともに会務を担当させていただくことになりました。三人の力を合わせ、その遂行に当たりたいと思っています。
 さて、いよいよ二十一世紀に向けて秒読みの段階になってきましたが、昨今の社会状況を見てみますと、景気の停滞、相次ぐ金融機関の倒産、トップクラスの官僚の汚職など、暗い話ばかりが聞こえてくるという残念な事態になっています。現在の日本には正義という理念が欠落していると指摘する声もありますが、その意味では正義の実現を目的とする司法が果たさなければならない役割は今後ますます大きくなってくると思われます。

 日本弁護士連合会では、二十一世紀に向けていくつもの重要な提言をしていますが、中でも和歌山弁護士会にとっては、弁護士過疎地域における司法サービスの充実に向けた取り組みが課題であると思います。
 日弁連では地方裁判所の支部単位で、登録弁護士の人数を調査し、弁護士が0または一名の地域をゼロワン地域と呼んで、これらの地域における弁護士へのアクセスの充実をはかる取り組みをすすめています。現在当会の登録会員は61名、実働は59名ですが、そのうちの9割近い52名が和歌山市内の登録で、それ以外では田辺市に6名、新宮市に1名が登録しているだけですので、御坊、新宮がゼロワン地域ということになります。広大な紀南地域で活動されている会員の皆様は大変なご努力をされていることと思いますが、当会としましては、これらの皆様の意見を尊重しつつ、弁護士過疎地域対策に取り組むことが必要だと考えます。

 その一は、常設法律相談所設置問題です。
 日弁連では、2000年度までにゼロワン地域をかかえる弁護士会が最低一カ所の常設法律相談所を設置することを提案しています。当会でも、昨年度から予備調査をすすめていますが、今年度は設置に向けて計画の具体化をすすめていきたいと思います。
 二番目に、被疑者国選弁護制度の実現に向けた取り組みです。
 日弁連では2000年度には全事件に広げるべく運動に取り組んでいますが、ここでもゼロワン地域における対応が大きな課題になっています。当会でも、この問題について会内の議論をすすめるなど実現に向けて取り組みをすすめていきたいと考えています。
 そのほかの点では、本年度より取り組まれる義務的な会員向け倫理研修制度を実効的なものとして成功させていくことが求められています。

 時々マスコミをにぎわせる弁護士の横領事件などの不祥事は、幸い当会では問題になっていませんが、それに満足するのではなく、将来起こるかもしれない不祥事の芽を未然に摘み取ること、さらに、国民からの信頼をより高めるための制度としたいと考えています。
 少人数で県下全域にわたる法律サービスの充実を計るとなると、会員の負担増の問題が避けてと通れませんが、これを会員の犠牲のもとに実現するのではなく、会員の負担緩和と両立できる道を探っていきたいと考えています。

 不手際なこともあろうかと思いますが、会内外の皆様方のご意見を尊重した会の運営を図っていきたいと考えていますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。