週刊報道ワカヤマ Y67(2006年6月30日)
                              

   
時  事  折  々 (第18回)  田  中  昭  彦

                       近未来の改憲はない!

                                  
                                   (表題 編集人藤原無我氏)

 ここ2回は紀行文まがいで軽く上がった。今回は柄でもないが、前に編集人から誘導のあ

った「憲法論議」という重いネタを軽く上げてみよう。憲法記念日は5月3日、6月末ともなれ

ばマスコミの関心も薄くなる。薄いネタの天ぷら論議は軽く上げるのがよい。

 さて、今日日の「憲法論議」はと言えば、「憲法とは何か」というような根本問題ではなく、憲

法9条について、護憲か?改憲か?という論議に尽きる。おおかた編集人の思惑もジジが

どっちを向いているのか知りたかったのであろう。ジジの憲法論は自主制定憲法論ならぬ

自主成長憲法論である。

 憲法9条の定めは次のとおり。

 (1項抜粋)国権の発動たる戦争と・・武力の行使は・・永久にこれを放棄する。

 (2項抜粋)陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。

 分かりやすい日本語である。この条項は、憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信

義に信頼して、われらの安全と生存を保持しょうと決意した。」という宣言を受けた規定で

ある。

 憲法9条改正論が出てくる背景事情。

 まず、憲法前文で「崇高な理想」を謳っても「日本の自主制定でない(実子でない)押し付

け憲法」という生い立ちの問題が、背景事情のその1。

 次に、憲法の表現と現実がかけ離れているという問題。最近、「イラク派遣自衛隊撤退」と

いうニュースがあった。このように、役割はともかく外国での戦争にまで自衛隊を派遣すると

いう現実がある。誰の目から見ても自衛隊は軍隊そのもので、素直な日本語の解釈では明

確な憲法違反だと思うが、現下の国の解釈は「自衛隊は軍隊ではない、だから憲法違反では

ない」という。これは「黒く見えても黒ではない」と言うようなもので、言語明瞭意味不明あや

ふやですっきりしないことおびただしい。このような場合、人は「はっきりさせたい。すっきりし

たい」という気持ちになりがちである。この気持ちが背景事情のその2。

 以前は、生い立ちや現実との違いがあっても、歯止め効果を期待する護憲派が大幅に多

かったと思う。

 ところで、この5年間に、アメリカの01年9・11テロと、アフガニスタン、イラク戦争があり、

北朝鮮の金正日が日本人拉致を認めるという出来事があった。諸国民の公正と信義を信

頼していてよいのか?従前のすっきり改憲派に加え、近時、自衛隊の存在は認め、国外で

の活動には厳しく縛りをかけた上で武力行使も禁ずる、という形の9条改正を構想するいわ

ば護憲的改憲派が出てきたという。

 このようなことからか、5月に行われた朝日新聞の世論調査結果は、『9条「変更」「維持」

並ぶ』という見出しとなった。世の護憲派は危機感を募らせる。

 ジジは歯止め効果護憲派であるが、危機感は持たない。その理由は、現行憲法も誕生後

60年経過、その間その時々の環境に順応しながら成長してきたことで、もはや実の親の意

向や育ての親の意向どおりにはいかない。明文と現実の間は不文法のようなもの。不文法

の改正ということはなく、従って近未来に憲法改正はない。ジジの自主成長憲法論は憲法

変遷容認論。