週刊報道ワカヤマ Y55(2006年4月7日)
                              

       
時   事   折   々 (第15回)       

                       複 雑 な 4 月・・・

                                  
                                   (表題 編集人藤原無我氏)

                   時 事 折 々        田 中 昭 彦
 先月が3月で、今月は4月。ジジの誕生月にして、還暦三歳。めでたくもなし、嬉しくもな

し。ではあるが、この月は桜花爛漫、藤・桐・三光と花見で一杯(平安貴族もジジも遊んだ

花合わせの役)、華やかで花いっぱいの月である。そして、世の中は、学生の進級・入学・

就職、会社員や公務員の人事異動による昇進・昇任等、めでたい月でもある。

 さて、今月1日、高齢者等雇用安定法(昭和46年施行)の一部改正が施行された。今次

の改正は、年金支給開始年齢の引上げに合わせ、65歳までの雇用の確保を目的とする

もので、事業主に対し、平成25年度までに段階的に、65歳までの定年の引き上げ、継続

雇用制度の導入等の措置を求めるものである。なお、改正法においても、現行の「定年の

定めは、60歳を下回ることができない。」という規制内容(60歳未満定年の禁止)を変更

するということではなく、右の間に@定年の引上げ、A継続雇用制度の導入、B定年の定

めの廃止ーいずれかの措置をとるよう実施義務が盛り込まれたということである。

 定年と年金支給開始年齢の引上げという問題が直面する背景には、少子高齢化の進展

と今後の数年間はいわゆる「団塊の世代」の定年がピークになるという事情がある。少子

化の実態を実感するため、ジジが卒業した紀の川市旧粉河町の川原小学校(旧川原村校

区)の入学児童数の比較をしてみよう。ジジは終戦前の昭和18年4月生まれ・同25年の入

学で、1学年2クラス約55人。姪は団塊世代の昭和23年3月生まれ・同29年入学で、2ク

ラスで90人あまり。甥の次女は平成元年生まれ・同8年入学で、1クラス23人。今年の入学

者数は20人を切るという。この結果を見ても、団塊集団の大きさが理解でき、この集団の

年金財源の確保は大きな問題であることが理解できる。

 話を変えて、ここで定年の善し悪しについて、公務員とジジのように定年のない職業を比

べてみよう。公務員の定年は60歳(誕生月にかかわらず翌年3月31日)であり、その時点

で退職金が支払われ、退職者は40年前後に及んだ勤務から解放される。なお、希望すれ

ば退職後の再任用の制度があり、この期間はこれまで2年間であったが、改正法の施行に

合わせ今後段階的に5年間に延長される。

 定年というと、役目を終えたというニュアンスがあり、また定年退職者から「センセら定年な

いのでええわ・・ワシら毎日暇でしゃーない。」と言われることがある。善し悪しはここである。

すなわち、ジジから言うと、ここが羨ましくてたまらない。公務員は、定年という避けられない

節目を境に毎日の時間の過ごし方がころっと変わる。変えることに力がいらないのである。

しかし、ジジは若いときは60歳で弁護士の第一線から引退し、後は好きなことをするのを

目標としていたが、思い通りには行かず、次の目標は5年間延長の65歳である。

 この数年は、毎年三月末頃、定年退職をする公務員の送別懇親会で挨拶する機会がある

が、この挨拶の内容は単に「おめでとう」とはいかずなかなか難しい。今年は、「これまでと

時間の過ごし方が変わります。既にお考えがあるとは思いますが、時間を味方につけて充

実した第二の人生を過ごして下さい。私などは変えたくても決まった境目がなく、この年にな

っても昨日の続きの今日を生きている日常でありますが、この意味で定年退職があることを

ある種羨ましく思います。」というような趣旨を述べた。

 ジジが「羨ましい」と言った気持も本心なら、先の「暇でしゃーない」と言った人の気持も本

心。そうであるなら、暇という余裕と可能性がある方がずっと善し。